古民家カフェ「cafe shinya(しん屋)」を営む、衛藤ご夫妻の挑戦
更新日:10月26日
今回は、「大分県地域課題解決型起業支援事業」の令和7年度採択者である、衛藤晋作さん、真実(まみ)さんご夫妻を取材させていただきました。



2026年6月24日。雨の降る安心院ののどかな山あいで、ご自身たちでリノベーションされたという温かみあふれる古民家カフェ「cafe shinya(しん屋)」の扉を開けると、衛藤さんご夫妻が温かい笑顔で迎えてくださいました。
今回は、会社員からUターン移住を経て就農し、さらにカフェを開業するに至ったご夫妻の歩みと、これからの未来に向けた思いをご紹介します。
■ 移住のきっかけは「子供たちの健康」と「食」への思いもともと北九州市で会社員として働いていた晋作さんですが、3年前にご自身の地元である宇佐市安心院町へUターン移住し、農業の道を歩み始めました。その最大のきっかけは、お子さんのことでした。「自然豊かな、空気のきれいな環境で生活したい」「子供たちに、自分たちの手で、安心して食べさせられるものを作りたい」という思い。ご夫妻の間で、移住や起業に対する対立は一切なかったといいます。それは、「子供たちの健康」という何よりも優先すべき共通の目標があったからでした。
空き家バンクを活用して見つけた現在の住まいには、1.2町(約1.2ヘクタール)の農地が付いていました。ここが、ご夫妻の新しい挑戦の舞台となりました。
■ 農業の現実と、相乗効果を狙った「カフェ」という新たな挑戦衛藤さんご夫妻の農園「優しいお野菜 しん屋」では、農薬や化学肥料、除草剤を一切使わない自然栽培を取り入れて、お米や野菜を育てています。晋作さんは「米・食味鑑定士」の資格を持ち、その知見を活かしてお米作りに励んでいますが、就農して間もない身としての壁、すなわち「販路開拓」の厳しさに直面したといいます。マルシェへの出店やネット通販、宇佐市のふるさと納税の返礼品など様々な方法を模索したものの、農業単体で収益を安定させることは容易ではありませんでした。そこで、この課題を打開するために立ち上げたのが、2026年3月5日にグランドオープンした古民家カフェ「cafe shinya」です。
「実際に自分たちが作ったお米や野菜を食べてもらい、味を知ってもらう。そうして、しん屋のファンになっていただくことで、農業とカフェが半々で支え合う相乗効果を生み出したい」
カフェの開業は、農業の販路開拓と収益安定化に向けた、前向きで綿密なリスク分散の戦略でもあったのです。
■ 4〜5年の試行錯誤で生まれた、愛情たっぷりの米粉スイーツ
カフェの一番の看板メニューは、小麦粉を使用しない米粉のスイーツです。
これは、お子さんのアレルギーをきっかけに、「おやつでも美味しく栄養を取ってほしい」と、真実さんが4〜5年もの歳月をかけて試行錯誤し、開発したものです。



自家栽培の無農薬米を自ら乾かして粉砕した玄米粉や甜菜糖(てんさいとう)を使用するこだわり。最初は「ササニシキ」で作っていたシフォンケーキですが、現在は「ゆうだい21」という品種のお米を使用しています。お米の品種を変えると甘みや水分量が変わり、焼き上がりに苦労したそうですが、配合をミリ単位で調整し、納得のいく「ふわふわで、しっとりぷるぷる」な食感に辿り着きました。
また、温かいお皿にのせて提供され、口の中でとろける「とろけるチーズケーキ」など、お客さんに喜んでもらうための細やかな工夫が随所に散りばめられています。

そして、スイーツと一緒に提供されるこだわりのコーヒーは、大分市や中津市に店舗を構えるサファリコーヒーロースター(SAFARI COFFEE ROASTER)さんの豆を使用しています。エスプレッソマシンの導入相談に行った際、オーナーのコーヒーに対する熱い情熱に感銘を受け、「この人の豆なら間違いない」と仕入れを決めたそうです。安心院にもサファリコーヒーさんのファンが多く、「サファリの豆を使っているから」と来店されるお客様もいらっしゃるほど。実は、私自身もかつて中津のラジオ番組を担当していた頃に店舗にお伺いしたことがあり、懐かしいご縁を感じました。
■ 誰もがふらっと立ち寄れる「居心地の良い地域の居場所」を目指して
「自分たちが幼い子供を連れてお出かけした時、カフェで断られて悲しい思いをしたことがあった」
その経験から、店内にはおむつ交換室や授乳室を完備し、小さなお子様連れや赤ちゃん連れのママでも気兼ねなくゆっくり過ごせる空間を作りました。平日は畳の部屋が大人気で、ママたちの貴重な憩いの場となっています。

さらに、安心院でカフェを営む中で、これまで見えていなかった地域の課題にも気づくようになったといいます。放課後の子供たちの過ごし方、学校に行きづらくなった子供たちの居場所、そして高齢者の孤立や介護の問題。
「おじいちゃんやおばあちゃんも、ふらっとコーヒーを飲んでおしゃべりできるような、誰もがのんびりと立ち寄れる居場所にしていきたい。今後はそんな地域課題を解決できるイベントなども、このカフェで開けたらと考えています」
ご夫妻の視線は、単に飲食を提供するだけでなく、安心院という地域全体の未来へと向けられています。
■ これから大分で起業・移住・就農を目指す方々へのエール
最後に、ブログの読者である起業家や移住を目指す方々へのアドバイスをいただきました。
「まだ私たちもこれから頑張る段階ですが、ぜひ『一緒に頑張りましょう』と伝えたいです。『田舎には何もない、働く場所もない』と言われてみんな出て行ってしまいますが、実際はそんなことはありません。やろうと思えば、アイデア次第で何でも色々なことができます。自分たちだけでなく、同じように頑張っている人たちと手を取り合って、地域を盛り上げていきたい。そして将来はここで雇用も生み出し、地元を出て行った仲間たちが戻ってこられるような場所にしていきたいです」
終始お互いを信頼し合い、和やかな笑顔でインタビューに応えてくださった衛藤晋作さん、真実さん。
お二人の温かく力強い挑戦を、おおいたスタートアップセンターはこれからも全力でサポートさせて頂きます!
【店舗情報】cafe shinya(しん屋)
住所:大分県宇佐市安心院町廣連172-2
営業時間:10:30〜16:00
定休日:土曜日・日曜日・月曜日(不定休あり)
